富山県民主医療連合会(富山民医連)は、無差別・平等の医療と福祉の実現をめざす組織です。

みんなで看取って寄り添って 民医連新聞4月3日号

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みんなで看取って寄り添って 富山医療生協 “最期は我が家で”身寄りのない患者さんが願ったことに!

 

 新入職員の皆さん、ようこそ。「無差別・平等の医療と福祉」を掲げる民医連には、一人ひとりの患者さん、利用者さんに多職種で向き合い、寄り添う実践が無数にあります。例えばこんな実践も。富山では、身寄りのない高齢の患者を、本人が望む自宅に帰し、看取りました。富山医療生協の仲間のとりくみを紹介します。(丸山聡子記者)

 

 「正彦さん(仮名)が家に帰れるのは今しかない。何とか帰したいと思っているが、みんなの意見を聞きたい」。昨年一一月下旬、火爪(ひづめ)健一医師は病棟と在宅のスタッフを前に切り出しました。呼吸不全、心不全で富山協立病院に入退院を繰り返していた八九歳の正彦さん。予後も悪く、幻覚も現れるターミナルの状態でした。正彦さんはひとり暮らし。この状態で帰せるのか―。火爪医師も迷っていました。
 「やりましょう」。スタッフから声が上がりました。大急ぎで退院の準備をし、二日後にはアパートへ。往診を担当する山本美和医師と看護師が付き添い、夜には主治医の火爪医師も自宅に様子を見に行きました。

 

 

地域の仲間といっしょに

 

 

 何かに怯えて叫んだり、暴れたりする不穏な状態は、自宅へ戻ると嘘のように消えました。「ヘルパーの手助けで自分でトイレにも行けました。家に帰れて良かったと思いました」。在宅福祉総合センター「きずな」のケアマネジャー・松島真知子さんは言います。
 訪問看護師やヘルパー、往診…。あらゆるサービスを組み込みました()。このことを聞きつけた育児休業中の職員も、赤ちゃん連れでお見舞いに来ました。
 松島さんは緊急通報ボタンも用意。それでも、事業所のサービスだけでは見守りがつなぎ切れません。「薬でもうろうとしていたので、いざという時に本人が通報できるか心配でした。また、部屋を後にする時の『もう帰るんか~』という正彦さんの声が耳から離れず、医療生協の組合員さんに力を借りようと思いつきました」と訪問看護の唐島田美和子さんは言います。
 声がかかったのは武田正一さん、富山医療生協たすけっとクラブ(有償ボランティア)のメンバーで、かつて正彦さんの引っ越しも手伝い、デイサービスでも顔なじみの間柄でした。武田さんが正彦さんのアパートを訪ねてみると、不安な様子で待っていました。「『北島三郎のCD聴かれっか?』と、声をかけると安心した表情になり、二人で聴きました。センターや病院がバックにいるから、専門職でない自分でも不安なく役に立つことができた」。
 退院から四日後、正彦さんは息を引き取りました。火爪医師が死亡確認に行くと、複数の職員が集まり、枕元で泣いていました。「いい旅立ちだと思いました。夜中に不安になると病院に眠りに来るほど病院が好きだった正彦さんが、最後は『家に帰りたい』と言い続けた。センターや地域の人に見守られて逝きたかったのかな」。

 

 

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困難な人にこそ

 

 

 富山民医連の歴史は、一九五〇年の富山診療所から始まりました。在日朝鮮人や生活苦を抱える人たちが「自分たちの診療所を」と集まって作った診療所です。「だから、困難な人にこそ寄り添うのが自分たちの役目、という思いがある」と火爪医師は言います。
 正彦さんもそんな一人。幼い頃に母親と生き別れ、ばくち小屋を営む祖母宅に預けられました。建築現場などで働く中でアスベストに曝露し、慢性の胸膜炎を患って働けなくなりました。生活保護を受給しながら診療所や協立病院に通院していました。在宅福祉総合センター「きずな」とは一九九九年の設立当初からのつきあいで、デイサービスの人気者でした。

 

 

病院 在宅 切れ目ない支援をめざす ――病棟看護師全員が往診に同行

 

 「正彦さんのような在宅での看取りは増えています」と富山協立病院の山本美和院長は話します。以前から「入院から在宅支援まで一貫して行える病院」を意識してきました。昨年は、病棟にいる看護師全員が往診に同行しました。
 主任看護師の石黒千恵美さんは、往診に同行したことで看護スタッフの変化を感じています。「家では患者さんがいい表情をしていることに気づき、『退院後も無事に在宅生活ができるようにする』というのも病棟にいる自分たちの役割の一つだ、と考えるようになった」。早めに退院準備を始め、退院後も自宅を訪問します。「看護師は嬉しそうに出かけていきます」と石黒さん。

 

 

生協ボランティアも頼り

 

 医療や介護が行き届かない時は同生協の組合員で作るたすけっとクラブが頼りになります。一時間八〇〇円で、公的制度では足りない家事や病院付き添いなどの支援をしています。いま、登録している利用者(てつだってさん)は四五〇人、支援する側の協力者(たすけっとさん)は約三四〇人。
 地域連携室SWの石田沙織さんは言います。「富山医療生協なら、と困難なケースが持ち込まれることも多い。多職種や地域の人と連携して、“最後の砦”を守っていきたいです」。

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 民医連に加盟する事業所は全国にあり、健康友の会や医療生協組合員など「民医連の活動をともにすすめるパートナー」である共同組織は三六九万。健康づくりやまちづくり、制度改善運動など、幅広く行っています。

(民医連新聞 第1641号 2017年4月3日)

 

 

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